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ベテル

アイデアとモノづくりを繋いで世界へ

2022年9月27日

今回、当機構の海外展開推進員の石村が開発型ものづくり企業の株式会社ベテルを訪問して、代表取締役の鈴木潤一氏に話を伺いました。

 
  

 

 

 

 

事業の概要

石村:それでは、まず御社の事業概要を教えていただけますか。

代表取締役 鈴木潤一 氏

鈴木:昭和48年に先代(現会長)が独立して、ここ石岡市で電子部品の組立作業を開始したのが始まりです。しばらくは、大手電機メーカーの仕事を中心に請けてきましたが、その間に培った組立技術を生かして精密部品の組立に移行し、その後、プラスチック射出成形の仕事、金型製作など、業域を拡大してきました。大手電機メーカーとは今でも取引を続けていますが、自社開発の製品も手掛けるようになったほか、クリーンルームを備えた医療・歯科系プラスチック製品開発業務に主軸が移ってきています。現在、当社が注力している事業は、①電設資材・インテリア部品等のOEM生産事業、②医療・歯科・介護(オーラル・ヘルスケア)用製品、③熱物性計測・熱分析ソリューションの三つです。

石村:時代に合わせて次第に業態を変化させてきたのですね。

鈴木:そうです。中でも一番大きな転換点は、先代の「何か新しいことをやりたい」という強い意志のもと、今から20年ほど前に、つくば市にある産業技術総合研究所の門をたたいて、シーズ技術を導入し、自社で「サーマルマイクロスコープ」を製品化したときでしたね。

 

石村:「サーマルマイクロスコープ」とはどのようなものなのでしょうか。

サーマルマイクロスコープ

サーマルマイクロスコープ TM

鈴木:サーマルマイクロスコープは日本語では「熱物性顕微鏡」と呼ばれるレーザー光を物体に当てて熱伝導率、熱拡散率、熱浸透率を計測する装置です。基本特許は産業技術総合研究所が所有しており、当社は共同研究という形で参画し、学術論文も共同で書きあげて発表しています。この装置を用いることにより、これまで測定ができなかった微小な領域である薄膜の熱評価を行うことができます。主なターゲットユーザーとしては、工具用や光ディバイス用など、国内で薄膜を開発している大手金属メーカーやセラミックスメーカーだったのですが、年間に売れるのはせいぜい数台で、事業としては低空飛行が続きました。

石村:売れなかった原因は何だったのでしょうか。

鈴木:「サーマルマイクロスコープ」は、その用途範囲があまりにも狭すぎたからだと思います。それで、その状況を打開するために、続いて「サーモウェーブアナライザー」という、「サーマルマイクロスコープ」よりももっと測定できる対象物の範囲が広い装置を産総研さんと共同で開発したんです。この装置は、熱を拡散する過程のシミュレーション測定などに使われるのですが、たとえば、スマホが稼働すると結構な熱が発生しますよね。熱が発生するとスマホは処理能力が落ちてしまいますので、その熱を上手く逃がす必要があります。この熱を逃がす薄膜材料をメーカーが開発する際の測定などに用いられます。こちらの製品は、用途が以前より広がったことと、その後にスマホのような電子通信機器が劇的に普及したこともあって、台数的にはかなり売れていまして、それで現在に至っております。

石村:今から20年くらい前は、熱の発生が大きな問題となる、スマホのような電子通信機器はそれほど多くはありませんでした。熱伝導の測定技術に着目した先代はすごいですね。

鈴木:先代は、将来的に見て、各分野において測定器は欠かせないものと考えたようです。測定器の需要は堅いだろう、と。それで、現在、当社の熱物性計測事業は社内のハドソン研究所が担任しているのですが、この測定事業が当社の主力事業の一角を占めているということを考えると、先代の先見性にはただただ驚かされます。

石村:次に、会社としての一番のセールスポイントはどこでしょうか。

ルアーロック式

「ルアーロック式」プラスチックチップ

鈴木:やはり、開発力のあるところですね。金型製作、射出成型等、色々やっていますので、客先からの要求により設計、図面化、試作などで具現化できるのが強みです。もちろん、大手電機メーカーから図面や材料をいただいて部品を加工する仕事も多く扱っているのですが、それは開発力があってこそのことだと思うんです。たとえば、当社が手掛けている医療用のプラスチック部品については、たまたま当社の技術情報をホームページで知った医療機器メーカーさんから声がかかって、試作したのが始まりです。その直後に、リーマンショックが起きたのですが、不況であるにもかかわらず、日本の歯科医療部品に係る販売額は影響が小さいどころか、右肩上がりに上がっていったんです。それで、医療分野には大きな需要があるのではないかと感じて、医療業界との取引を拡大させていきました。

石村:企業に開発力があると、さまざまな仕事が舞い込んでくるというわけですね。

鈴木:はい。それで当社は「経営の原点は開発にあり」を理念に掲げて、医療や歯科用プラスチック製品の開発のほか、熱物性値の測定装置など、日本国内をはじめとして世界が必要としているものを作っているんです。

 

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