公益財団法人 いばらき中小企業グローバル推進機構

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清水商店

2022年3月10日

 

海外市場での販売

 

角掛:ちなみに、2013年当時は海外での「蒸しダコ」の需要はどれくらいあったのでしょうか。

清水:当時はまだまだポピュラーなものではなかったですね。現地で寿司や刺身にこだわっているバイヤーも、そこまでの知識を持っていなかったこともあり、すべてのネタにこだわっているというよりは、マグロなどの主要なものに注力しているという印象がありました。一方で,主要なネタ以外にもこだわっていきたいという風潮が徐々に出始めていた時期でもあったかと思います。

角掛:品目が広がっていく風潮がある中、御社のタコの品質が現地で認められて次第に評価されていったのではないかと思います。

出荷作業の様子

 

清水:現地の販売代理店がレストランなどに売り込む際には、「価格は少し高いけれどそれを上回る価値がある」とPRしてもらっています。この「価値」を相手に伝えるためには、製品のストーリー性が最大のセールスポイントになると思っています。当社の歴史、作り方、そして最後の決め手になるのが味です。輸出する時は冷凍したものを送るのですが、通常だと現地で解凍すると同時に旨みエキスも抜けてしまいます。当社はこれを三段階の加工方法によって旨みを凝縮しているため、解凍後も味が落ちないので、これが最大の強みとなっています。これも、現地で従来流通していたタコを試食してみて初めてわかったことなんですが(笑)。それで、現地のシェフたちには「まずは試食してみてください」と奨めています。すると「これは本当に一度冷凍して解凍したものか?」と聞いてくる人もいるくらい、驚かれることが多いです。

角掛:やはり味が決め手なのですね。そのほか、他社との差別化として何か工夫されていることはありますか。

清水:当社は取引先を1ヶ国1社と決めており、各国の代理店には、日本の他社の商品を取り扱わないようにという条件を付けています。私は「ブランド」というものは非常に伝わりづらいものだと考えています。いくら日本国内で有名な商品を紹介しても、海外では言葉も歴史も違うので相手はピンときません。「ブランド」というものは、信頼関係によって築き上げていくものだからです。なので、私は現地の代理店の人たちとの信頼関係を築くため一緒に営業でまわることから始めます。まずは私の人となりと商品のPRポイントを学んでもらい、「人」と「商品」との信頼関係をつくりあげると、そのあとはその代理店の人たちが自分に代わって現地で効率よくPRしてくれるのです。また、現地の代理店の人たちが一緒に回ることによって、納品や品質の保証までを含めて、現地レストランのオーナーたちの心証もよくなります。

角掛:取引には、まず両者の信頼関係が一番大事だということですね。

清水:そのとおりです。そして、展示会に出展した際には、自社(えんやどっと丸)のシェフを現地に連れて行って、現地で取り扱ってもらっているレストラン店舗に派遣して、和食の料理方法を伝授しています。これは相手に大変喜ばれています。

角掛:自社で飲食店をやっている相乗効果が出ていますね。

 

今後の方針

角掛:海外と取引していくにあたっては、原材料の高騰など、予期しない国際情勢の変化にも対応していかねばなりません。御社として、今後の展望はどのように考えていますか。

代表取締役 清水栄基 氏

清水:国内にも、まだ伸び代はあると思っています。品質を改善していけばまだまだ取引は広がる可能性があります。そのような中で、輸出を続けていくのは二つの目的があるからです。
一つ目は、輸出の経験を輸入に活かしたいためです。将来的には自社で原料のタコを直接買い付けて輸入することを考えているのですが、いきなり輸入というのはロットがあまりに多くなるためリスクが高いです。このため、まずは比較的リスクの少ない輸出でノウハウを蓄積していこうと考えています。
二つ目は、会社として、そして社員のプライドのためです。当社の社員が結婚式で自分の職業を言えなかったという話を聞いて、私は「これではいけない」と思ったんです。それで、自分たちが今やっている仕事が世界でどのように評価されているのか、それを身をもって知ってもらうために、海外の展示会やバイヤーとの商談に社員を順繰りに連れて行っているんです。そして、現地の高級日本食レストランで当社の商品がお客様に提供されている現場を実際に見せたり、現地のシェフを通じて当社の商品に対するお客様の声を聞いたりして、それらの評価を肌で感じてもらうことで、自分の仕事に対するモチベーションを上げていってもらいたい。その個々人のモチベーションアップが、結果的に会社全体の活力アップにつながっていくと思っています。

角掛:今後、輸出に取り組んでいきたいと考えている企業に対して、どのようなアドバイスをおくりますか。

清水:一旦、輸出をすると決めたら、途中で諦めずにとにかく成功するまで続けてみることですかね。できない理由を探さないこと。展示会の出展は1回だけ出て結果がでなかった、ダメだったから終わりではなく、3年~5年継続してやってみないとわからないと思います。少なくともそれぐらいは腰を据えて続けていってほしいですね。

角掛:最後に、機構への要望等があれば、お聞かせください。

清水:展示会出展の機会はありがたいと思っているので、これからも増やしていってほしいですね。大きな国でなくとも、カンボジア等のまだ開拓されていない国でもいいと思うんです。将来的には大事になってくると思うので、そういうところを攻めてほしいです。もしも、機構がカンボジアの展示会に出展するとなったら、当社はまっ先に参加しますよ(笑)。

角掛:わかりました。その時はまっ先にお声をかけさせていただきたいと思います(笑)。

株式会社 清水商店
●設   立 昭和36年10月
●資 本 金 3,000千円
●代表取締役 清水栄基(しみずえいき) 
●従   業   員 65人
●年   商 31億円
●所 在 地 茨城県東茨城郡大洗町磯浜町6881-72
●事業内容  水産加工
●輸出比率  売上の12%(約3億8千万円)
 清水商店HP

 

 

 

 

 

聞き手
公益財団法人いばらき中小企業グローバル推進機構
海外展開推進員
●氏  名 角掛康弘(つのかけやすひろ)
●専門分野 食品(畜産、有機)
●経  歴
大手総合商社で、長年にわたりマーケティング及び貿易業務に従事。米国駐在及び中国での現地法人設立経験がある。

 

 

 

 

 

 

 

角掛:今回の対談の中で一番印象に残ったのは、清水社長さんが「外国に出てみて初めて、私は自分の会社の強みに気づいた」と話されていたことでした。海外の展示会では、当然のことですが、ブースにいらっしゃる方々は外国人ばかりです。日頃、国内で日本人だけを相手に商談しているときとは勝手が違って、その国での食習慣や風習などにより、とまどうことが多いです。ですが、まったく勝手が違う人たちの話を聞くことによって、自社の強み(最大のセールスポイント=売り)や弱み(補強しなければならない点)に改めて気づかされることも多いのです。
 海外展示会にチャレンジするということは大変な冒険でもありますが、海外展示会の出展手続きや費用、言葉の問題など、清水商店さんは茨城県が実施している海外展開事業を上手に活用することで、自社にかかる負担を軽減していますね。人の面や費用面でのハードルを下げる手を打てれば、海外へのチャレンジがぐっとしやすくなると思います。
 是非、海外展開にチャレンジしてみたいとお考えの茨城県内の中小企業さんがいらっしゃいましたら下記までご連絡ください。

【お問合せ先】
(農産品・加工品)
 グローバル展開一課
 TEL : 029-224-5412 FAX : 029-350-1103
 E-mail : global@iis-net.or.jp

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