橋本ブラシ
2022年9月21日
今後の海外戦略
石村:今後の営業方針をお聞かせください。
菅原:現在の輸出は、ほとんどが工業用途、特に自動車向けとなっており、国内用もまた自動車向けが大半を占めていますので、業種的な偏りを減らすためにも、今後は食品分野や医療分野に力を入れていきたいと考えています。食品分野においては、今後、HACCPが浸透し、これまでグレーゾーンとされてきたフランチャイズ等の各店舗においても個々に対応していかねばならないことになると、洗浄用ブラシの需要は増えることが予想されます。すでに、当社の製品を使用していただいている大手飲食メーカーもありますが、まだまだ入り込めていない外食産業、ファーストフード店、コンビニエンスストア、衛生用品などのメーカーがたくさんあります。また、医療用としても、ニーズが間違いなく存在しているため、営業をさらに強化していきたいと考えています。
石村:御社は工業系の海外展示会への参加が多いですが、2017年には茨城県中小企業振興公社が茨城県の共同ブースを設置したシンガポールでの食品系展示会にも参加されていますよね。これは、そういった食品系の洗浄ニーズを狙ったものだったのでしょうか。
菅原:そうですね。海外の各市場を調査していたときに、中小企業振興公社がシンガポールの食品系展示会に茨城ブースを出すので参加者を募集しているということを聞いて出展してみました。
石村:食品系の海外展示会での反応はいかがでしたか。

シンガポール展示会の様子
菅原:現地の会場では、いろいろなニーズを収集することができました。某航空会社からは、機内食の食器を洗浄するブラシを作れないかという話をいただきました。残念ながら、その話は展示会の会期中に具体的な打ち合わせを行うまでには至らず、メールのやりとりを数回しただけで終わってしまいましたが。やはり、仕様の打ち合わせをするにはそれ相応の時間が必要で、ましてや契約するまでにはかなりの時間が必要となりますので、現地の代理店商社を見つけてからでないと本格的な商談はできないなと感じました。それに、当社にとってシンガポールはちょっと遠すぎましたしね(笑)
石村:現在の御社の多言語対応ホームページは、機構のいばらきチャレンジ基金助成金を利用されたようですが、利用してみた感想はどうですか。

菅原:それまで、当社は日本語のホームページしか持っていなかったのですが、海外の展示会に出展した際には、日本語表記しかないホームページではまったく用をなさなかった経験から、英語バージョンのホームページを作る必要性を強く感じていました。おかげさまで、助成金をいただいたことで、より高品位な多言語ホームページを制作することができました。また併せて、英語版のパンフレットも制作しました。今後は、海外の展示会場でお客様にホームページやパンフレットを見せながら、より細かく説明することができるようになるので大変ありがたいです。
石村:英語版のホームページに海外から「CONTACT」するページがありますが、外国人から問い合わせがあった場合は、誰がどのように対応しているのでしょうか。
菅原:基本的に私がすべてチェックして回答しています。今はまだ問い合わせが少ないので間に合っていますが、今後は問い合わせが増えてくると思うので、社内で対応できる人を育成していきたいと考えています。
石村:製品の一つ一つがオーダーメイド品となると、営業の担当者が製造現場に反映させるのは大変ではありませんか。

工場内の様子
菅原:いいえ、営業の担当者は全員、製造現場を経験しています。当社は、まずは「製造現場」が一番大事だと思っています。「製造現場」を熟知していなければ、相手側が抱えている課題を解決するための知恵や発想も生まれないため、価格の見積もりもできないんです。だから、まずはすべての社員を「製造現場」に配置して、製造のノウハウを徹底的に学ばせます。それができて初めて、お客様との打ち合わせや見積もりができるようになるんです。今までは、私がほとんど一人で営業を担当してきましたが、ようやく営業も任せられる社員が育ってきたので、これからは徐々に国内外の展示会に同行させて、営業の層を厚くするとともに、お客様の要望や傾向を製造現場にフィードバックさせていきたいと考えています。
石村:最後に、機構への要望等があれば、お聞かせください。
菅原:当社はこの先ヨーロッパ方面を狙っていきたいと考えていますので、ヨーロッパの工業系展示会に茨城県ブースを設けていただけると大変ありがたいですね。特にドイツは工業や医療関係で世界の先端を行っているので、必ず需要があると思います。その需要を探るためには、展示会への出展が一番効率がいいと考えます。出張ベースだけではもったいない。せっかく遠くに出張するのなら、展示会に出て、商談もして、街に出て市場調査もやりたいです。しかし、そのようなことは、中小企業一社ではなかなかできません。ヨーロッパ方面には、当社は全く行ったことがなく不安もあるので、是非、共同で活動できるような茨城県ブースを設置してもらいたいですね。実は、以前からずっと当社はヨーロッパでの茨城県ブースの出展を要望し続けているのですが、なかなか実現していない。実現したらいつでも行けるようにと心の準備はしているんですけど(笑)。茨城県としての予算の都合もあるでしょうが、今度こそは是非実現していただけるとありがたいです。期待しています。
石村:わかりました。海外輸出に取り組んでいる最前線の中小企業さんの声として茨城県に伝えていきたいと思います。本日はありがとうございました。
株式会社 橋本ブラシ製作所 |
聞き手 |
【コメント】
石村:工業製品を海外に輸出するためには、越えなければならないハードルがたくさんあります。また、輸出した後も、メンテナンス保証やアフターサービス等でいろいろと制約を受けるのが、工業製品の特徴です。したがって、ものづくり中小企業が単独で製品を海外に輸出するということは、大変な苦労が伴うのですが、橋本ブラシ製作所さんの場合は、海外の顧客との商談の経験から、ターゲットを海外へ進出した日系企業に絞り、かつ日本国内の本社へのアプローチも行い、両面から攻めることにしました。また、商流に日系の商社を入れ、海外への出荷手続き、アフターサービスを任せるようになりました。そして自身は商談を重ねて経験を積み、その後の営業の方向性を見定めているところが立派です。
一方、「営業の担当者にはまず製造現場で経験を積ませる」という方針が徹底しているところは大変参考になりました。また、橋本ブラシ製作所さんは、機構が募集している海外展示会の共同ブース枠だけでなく、国内の大規模専門展示会にも毎回エントリーするなど、たゆまぬ営業努力を続けています。さらに、外国語ホームページの整備にも機構のチャレンジ基金事業を利用するなど、上手に助成金を活用していますので、このあたりの計画性と積極性が輸出の成果につながっているのだと思います。
海外展開にチャレンジしてみたいとお考えの茨城県内の中小企業さんがいらっしゃいましたら、是非下記までご連絡ください。