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月の井酒造店

オーガニック日本酒に想いを込めて

2022年3月24日

今回、当機構の海外展開推進員の角掛(つのかけ)が日本酒を製造している株式会社月の井酒造店を訪問して、代表取締役の坂本敬子氏に話を伺いました。

 

 

 

 

 

事業の概要

 

角掛:それでは、まず会社の成り立ちを教えていただけますか。

代表取締役 坂本敬子 氏

坂本創業は江戸時代末期の慶応元年(1865年)、「松前屋」の称号で酒造りを始めて今年で156年になります。さらに元をたどると、今から350年ほど前の江戸時代の初期から、ここ大洗で日本酒や味噌の製造に用いる麹(こうじ)を造っていたそうです現在の会社の名前である「月の井酒造店」の由来は、初代当主が川崎大師参詣の折りに境内にあった弘法大師が飲んでいたと伝わる「月の井」と称される井戸にあやかって、お酒を飲んでくださる方の健康と厄除けを願うとともに、ここ大洗の磯節の歌詞の中にある中秋の名月にかけて名付けたと云われています。

角掛:浜に近い井戸だと、日本酒造りに欠かせない水に塩気が混じってしまいませんか。

坂本それも多くの方からよく聞かれるのですが、当社の原水は付近を流れる一級河川の伏流水が流れ込んでいる高台から引いてきているので、まったく塩気は混じっていないんです。むしろ、まったく無味無臭の酒造りに適した原水となっているので、安心して飲んでいただいて大丈夫ですよ(笑)。

角掛わかりました(笑)。では、主な商品を教えてください

坂本当社は現在、三つのブランドを展開しています。まずは、伝統的に受け継がれているオーソドックスな「月の井」ブランド、次に有機米を使い古来の「生酛(きもと)造り」で仕上げたオーガニック日本酒「和の月(なのつき)」ブランド、そして地元一貫造りに特にこだわった地酒「彦市」ブランドの三つです。

角掛「生酛造り」とはどのような造り方なのでしょうか。

生酛造りの基本となる酛造りの様子

坂本「生酛造り」は、江戸時代から明治時代にかけて広く行われていた酒造方法です。現在では、出来合いの酵母菌や乳酸菌等を添加して酒母を造る「普通速醸」と呼ばれる手法が主流となっていますが、「生酛造り」では、酒蔵の空気中や壁に長年自生している、その蔵特有の酵母菌と乳酸菌を自然の力で発酵させる昔ながらの手法をとります。

角掛「生酛造り」で日本酒を造っているところは少ないのでしょうか。

坂本あまりないと思います。手間ひまがかかるうえに、失敗するリスクもありますから。「普通速醸」は、酒母造りにかかる期間が「生酛造り」に比べ半分の2週間程度で済むので、雑菌の侵入による酒の腐造(ふぞう)を防ぎ、蔵人たちの労力を大幅に削減できる、いわば革命的な醸造方法です。なので、現代ではこの「普通速醸」方法が主流になっています。しかし、私たちは、何よりも自然を求める健康志向の人たちに自信を持って提供できる商品を造りたいと願って、手間と時間はかかるけど、人工的なものは基本的に何も加えない究極の自然製法でオーガニック日本酒「和の月」を完成させたんです。

角掛:そこまで自然製法にこだわった理由はなんでしょうか。

坂本:実は、私の夫である六代目蔵元が働き盛りに病で倒れたんです。それで、月の井の初代当主の想いに立ち戻り、私たちは日本酒を飲む人たちの健康を第一に考え、体によい有機の日本酒造りに取り組み始めることにしたのです。主人は、当初有機の酒造りに難色を示した(当時の)杜氏さんや蔵人さんたちをどうにか説き伏せ、最後は皆が一丸となって造り上げたのが初代オーガニック日本酒「和の月」なんです。ちなみに「和の月」のラベル文字は主人が亡くなる直前に病床で揮毫(きごう)したもので、現在も主人の想いを引き継ぎ同じものを使用しています。

 

 

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