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清水商店

2022年3月10日

 

海外への輸出

 

角掛:取引先は主にはどちらになりますか。

清水:取引先は、東日本を中心に日本全国にわたっています。海外への輸出もあります。

角掛:海外は具体的にはどのような国に輸出されているのでしょうか。

清水:現在は、カナダ、アメリカ、香港、タイ、シンガポール、マレーシア、ベトナム、フィリピン、ドバイなど世界10か国に輸出しています。

角掛:輸出することになったきっかけは何ですか。

清水:2011年の東日本大震災で社屋が被害を受けたこともあり、当時はできることは何でもやってみようと思っていて、ジェトロが主催する香港視察ツアーに県内15社のうちの1社として参加したんです。

角掛:食で有名な香港ですね。視察してみた感想はいかがでしたか。

清水:現地の百貨店やスーパーマーケット、市場などを巡り、現地レストランのシェフに日本から持参したタコを使って料理を作ってもらいました。そして、視察の中で一番驚いたのが、当社から1kmくらいの近所にある、地元の酒造会社の日本酒が現地で売られていたことでした。大洗というこの小さな港町から、まさか海外に日本酒が輸出されているとは夢にも思っていませんでした。香港視察での一番のショックは、実はこのことだったかも知れません(笑)。
その当時は、香港でも日本食がまだ浸透しておらず、現地の人たちから「マクドナルドだけでは満足できない。もっとおいしいものを食べたい」というような雰囲気を感じたこともあって、それで、ひょっとしたら当社の製品も海外に通用するのではないかと思ったんです。

角掛:ちなみに最初に輸出したのは、どちらの国になるのでしょうか。

清水:初めて海外に輸出したのは2013年、タイ向けでした。数量としては10kg程度でしたが、初の輸出だったこともあり、少し緊張したことをよく覚えています(笑)。九州経由で航空便にて輸出しました。

角掛:最初はタイ向けだったのですね。その後、各国に輸出を拡大していくにあたってはどのようにされたのでしょうか。

清水:ジェトロが開催している展示会や商談会に積極的に参加しました。また、当時の茨城県中小企業振興公社がシンガポールの展示会「Oishii JAPAN 2013」に出展する企業を募集していたので、それにも応募しました。

 

海外展示会に出展

 

角掛:展示会としてシンガポールを選んだ理由はなんですか。

清水:当時、香港やシンガポールは日本食が次第に人気になりつつあったほか、同じアジア圏ということもあって、出展初心企業に向いていると聞いていたからです。また、何かと手続きが大変な海外展示会への出展でも、公社のスタッフの方がまとめて手続きしてくれるため労力的に楽なこと、そして展示スペースを複数企業でシェアすることにより、比較的割安な予算で参加することができたこともありました。

角掛:実際に海外の展示会に出展したときの感想はどうでしたか。

蒸し上がったあと冷却工程を経たタコ

清水:正直なところ、出展したときは不安でした。右も左も分からない中で、外国人相手に商品の説明をしなければならない。これは相当なプレッシャーでした。しかし、展示会初日に現地のバイヤーが当社のブースに足を止めてくれて当社の製品を「とても美味しい」と褒めてくれたあたりから、「もしかしたら、これはいけるんじゃないか」と思うようになったんです。
その意味で、外国に出てみて初めて、私は自分の会社の「強み」に気づいたと言っていいでしょう。それまで、自分は「タコ」のことしか知らないような生活をずっと続けていたのですが(笑)、自分の会社が造っている「蒸しダコ」は普通の「蒸しダコ」だと思っていました。もちろん品質には絶対の自信を持っていましたが、味はごくごく標準的なものだと思っていたんです。なので、海外の展示会に出たところで、特に確たる勝算があったわけではないのですが、外国人バイヤーが当社のタコを試食して「とても美味しい。今までこんな美味しいタコを食べたことがない」と言ったのです。私はビックリしました。

角掛:そのバイヤーにとっては、驚きの味だったのですね。そのあと、どうなりましたか?

清水:そのあと、商談がみるみる進み、契約成立となりました。

角掛:それは素晴らしいですね。

海外展示会に出展時の様子

清水:余勢を駆って、次の年もシンガポールの二つの展示会に出展しました。そのときは、茨城県中小企業振興公社の「いばらき産業大県創造基金事業」の販路開拓支援事業(見本市出展)の助成金をいただいて出展しました。海外展示会への出展は多額の費用がかかるため、商談がまとまるかどうか確証がない中で多額の経費を投入するのは勇気がいることなのですが、助成金をいただくことで背中を押してもらうことができ大変助かりました。 

           

 

海外バイヤーとの商談

角掛:海外バイヤーにプレゼンするにあたっては、言葉の問題など多くの壁があったかと思いますが、どのように対応されたのでしょうか。

清水:言葉については、JETROや茨城県中小企業振興公社が専門の通訳者を手配してくれていたので、特に問題はありませんでした。ただ、私個人としては、きれいな英語でなくても自分の言葉で伝えることの方が大事であると思っていたので、自ら勉強して、ある程度は自らで話せるようにしていました。実は、それまで語学は大の苦手だったんですけど、自分の信念もあってどうにか克服しました(笑)。やはり、バイヤーに直接、商品の価値や品質を「自分の言葉」でPRできるということはとても大切なことですから。

角掛:多少通じない部分があっても「自分の言葉」でPRする、素晴らしい心掛けだと思います。海外展示会では、国内とは少し雰囲気が違ってバイヤーから価格をすぐ聞かれることが多かったのではないのでしょうか。

清水:かなり多かったですね。価格の部分については、現地で実際に商品をハンドリングできる会社(ディストリビュータ)が見つからない限り、サプライヤーである当社が最終的な価格を提示することができないんです。現地で実際にいくらで販売してもらえるか分からないわけですから。自社の商品の価格を商談相手に提示することができないということは、輸出交渉をするにあたって高いハードルになってきます。

角掛:御社はどのように対応していったのでしょうか。

清水:当社も、現地のディストリビュータを得る機会になかなか恵まれなかったことがありました。そのときは、タコを扱いたいという現地レストランまで直接足を運んで「現在、タコを扱っているのか?」「どこから仕入れているのか?」を聞き出して、当社からそのディストリビュータに連絡するという、流通ルートの下流から上流へと地道に辿っていく方法をとりました。
そして、ディストリビュータに連絡する際には、レストランが当社のタコを欲しがっているので、サンプルだけでもいいからコンテナに載せてくれないかと交渉し、その了解が取れたら、次は日本国内のエクスポーターに直接連絡してコンテナへの積載の手配を交渉して…、といった具合で一つ一つ話を進めていったんです。

角掛:社長様が直接交渉していったのですね。

清水:輸出に限ったことではありませんが、やはりモノを売るときには、売る側の熱意が最も大事なことだと思っています。海外展示会に出展した際も、ブースに来ていただいたバイヤーには、たとえ深夜の2~3時までかかったとしても、必ずその日のうちに、ブースに立ち寄りいただいたことに対するお礼の英文メールを送っていました。そうすると、翌日に代理店の人が当社のブースに来て、展示会の会期中に話がまとまることもありました。特に、海外との商談では、レスポンスの早さが求められることが多いので、社長など決断できる人が主導していかないと話が進んでいかないですね。

角掛:心で思っていても、なかなかできないことですよね。大変素晴らしい対応だと思います。レスポンスの早さは、こちら側の「売りたい」という本気度をバイヤー側に伝える指標の一つですから。

 

 

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